印南祭

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印南祭(いなみまつり - )は、和歌山県日高郡印南町山口に鎮座する山口八幡神社と同町印南に鎮座する印南八幡神社両社の祭礼のこと。 両社の祭日とも10月2日と同日であり、お旅所も同町印南の浜辺である為、同一視されているが、両社の氏子圏は明確に分かれており、両社の祭礼は別々である。

概要[編集]

山口八幡神社祭礼では御坊市名田町野島、上野、楠井、印南町津井、濱、地方、西山口の諸地域(氏子)によって開催される。 印南八幡神社祭礼では印南町光川、本郷、宇杉、東山口の諸地域(氏子)によって開催される。

両社とも神社所有の神輿を中心とした渡御祭りであるが、各氏子より出される屋台、お傘、幟で賑わい、神前では各氏子奉納による獅子舞や踊りが華やかに行われる。


歴史[編集]

印南祭の歴史上の所見は宝暦九年(1759)に記された「印南中村覚書」であり、戦国時代の領主、湯川右衛門太夫の氏神(山口八幡神社)で祭礼を始めたと記されている。湯川氏は中世中期より南紀から出自した土豪の一派で、室町幕府に使えた武将として知られている。その氏神として山口八幡神社で祭礼が行われたということは、中世に祭礼の形式が成立したことになる。 凡そ、現状の形式になったのは、近世中期と考えられ、各地区の屋台に近世の年号が見えることから確かであろう。

祭礼行事[編集]

山口八幡神社、印南八幡神社では9月23日にお旅所である浜辺(印南漁港)に神輿を収める御仮屋に大榊を立てる行事から始まる。 10月1日宵宮では、各氏子それぞれにおいて祭具である屋台、幟を出し地元周りを行う。 午後8時ごろより印南町内の印南橋付近において山口八幡神社氏子である濱、地方、西山口、印南八幡神社氏子である光川、本郷、宇杉、東山口の合同で盛大な屋台押しが行われる。 10月2日本祭では、名田町野島は早朝より野島の浜辺において獅子舞、奴踊りを奉納し、印南へ向かう。 その道中、上野、楠井、津井と合流し、印南の浜では濱、地方による幟の出迎えを受け、山口八幡神社へ向かう。 山口八幡神社へ宮入の際には、幟挿しを行い、神社境内では地方による雑賀踊り(けんけん踊り)と野島、上野、楠井による奴踊りが奉納され、多くの神具(御道具)と共に神輿のお渡りとなる。お旅所に到着後は、雑賀踊りを筆頭に奴踊り、獅子舞等の奉納をする。 印南八幡神社では東山口による踊り獅子(重箱獅子)の奉納を皮切りに光川、本郷、宇杉の宮入が行われ、神社境内において獅子舞の奉納が行われる。その後、神具と共に神輿がお渡りし、それに続いて各地区の屋台も動向する。お旅所近くになると有名な「川渡り」が行われる。そしてお旅所において東山口による踊り獅子、各地区の獅子舞を奉納する。

組織[編集]

祭礼行事執行は、各地区に組織されている青年団(若い衆)によって担われている。 内訳は、青年(18~25歳)中老(25~35歳)世話人(35~45歳)となっているが地区により年齢は前後する。 また、それらとは別に各地区それぞれ屋台警護、幟警護、神輿警護、年行事、氏子総代、祭典委員を組織する。 特殊例として神輿の先導、神輿担ぎ、神具持ち(御道具持ち)神輿のお迎え、供物奉納、神職雑務等各個人に代々与えられた特権も多数存在する。


諸芸能[編集]

印南祭では、様々な諸芸能が氏子より奉納される。その中でも獅子舞は全地区が奉納する諸芸能であり、何れも二人立ちの獅子舞で太鼓と笛の囃子で舞われる。 獅子頭は屋台に安置され、神として扱われており、その形状は、伊勢太神楽の系統を受け継ぐものであろう。 また、野島、上野、楠井では奴踊りを奉納するが、奴とは近世の奴を模写した踊りであり、奴装束に頭巾を被り、歌唱による音頭で輪踊りをするのが特徴である。近隣では御坊市、川辺町、日高町、南部町で確認できるが、その由来は不明である。

神事芸能[編集]

山口八幡神社の氏子である地方には雑賀踊りを奉納する特権があり、日本全国では印南を含め2例(和歌浦東照宮和歌祭)しか存在しない踊りを有する。雑賀踊りは雑賀孫市の伝説に由来する戦勝踊りとされており、徒歩装束に兜を被り、手にはスリササラを持ち、円を描いて輪踊りをする。

印南八幡神社では東山口による踊り獅子が特権的に奉納されている。踊り獅子は和歌山県日高郡内に11例存在する。 踊り獅子はオニ、ハナタカ両者と獅子とが絡む舞であり、オニ、ハナタカ両者の持つ矛とササラの音を頼りに舞う無楽器の舞である。その舞には悪鬼を払う力があるとされ、オニ、ハナタカは獅子によって追い払われる内容である。学術的には若狭地方の王の舞、舞楽に通ずる芸能と考えられるが、仏教的影響も強くその起源は中世まで遡れると考えられる。


文化財[編集]

平成19年印南八幡神社祭礼及び東山口の踊り獅子は県指定無形文化財に指定された。


外部リンク[編集]