拳児

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拳児』(けんじ)は小学館の雑誌『週刊少年サンデー』に昭和63年(1988年)2・3号から平成4年(1992年)5号まで連載された、原作:松田隆智、作画:藤原芳秀漫画。最終巻である第21巻収録の「拳児外伝」は『週刊少年サンデー』平成3年(1991年)12月増刊号掲載。

中国拳法「八極拳」を学ぶ少年、拳児が、さまざまな人に出会いながら中国で行方不明になった師匠でもある祖父を探しに行く物語で、拳児の成長を描く物語でもある。 全21巻。最終巻は「外伝」と題し李書文のエピソードのみでまとめられている。

作品はフィクションとして書かれたが、原作者の松田隆智の武術遍歴をもとにした「私劇画」であり、作中に登場する達人たちの内、故人は全て実在の人物。連載当時の時点で存命の人物は偽名であるが、その容姿、経歴、門派(流派)などが実在の人物と一致する。そのため当時から現在に至るまで武道・武術を学ぶ人たちの間では漫画であると同時に半フィクションとして扱われているのがこの作品の特徴でもある。

主人公がやる拳法『八極拳』は、劇中非常にドラマチックかつ強力に描かれ、物語上最強にも見える描写をされており、中国拳法といえば八極拳というイメージを作っている。格闘ゲームブームが来たとき、本作の影響で八極拳士のキャラクターもたくさん登場したが、どう見ても『拳児』を見て作ったイメージのキャラクターが多い。

あらすじ[編集]

元気な小学生、剛拳児は優しい父とちょっと口うるさい母との三人家族。一人暮らしをしている父方の祖父、侠太郎は明るく破天荒な人物で、拳児は大好きだ。ある日、ひょんな事から侠太郎が拳法を使うところを見た拳児は自分も学びたいと申し出る。侠太郎の使う拳法は八極拳という、王者の風格があるという一撃必殺の拳法。投げ出しそうになりながらも修行し続け、功夫(クンフー)を積んでいく。しばらくして、侠太郎は中国に行くと言い出す。侠太郎は戦争で中国に行ったとき、負傷していたのを現地の人に助けられ、そこで八極拳を学び家族のような扱いを受けた。戦後日本に帰ってからも世話になった人の消息が忘れられなく、死ぬ前にもう一度会う約束を果たしに行きたいといい、侠太郎は旅立っていった。

数年たち、拳児は中学生になっていた。拳法が大嫌いな母の目を盗んでは修行にはげむ毎日であったが、あるとき暴走族のケンカに巻き込まれ、母の希望する上位の高校には進学できなくなり、札付きのワル高校に進学することになる。侠太郎がいないため八極拳の修行を進めることができず、空手、ボクシングなどをやりながら高校生活をすごす毎日。中国に旅立ってから侠太郎から音信がなく、拳児は侠太郎を探しに中国に旅立つ決意をしていた。修行に行き詰まりを感じていたとき、横浜中華街で中華料理店を経営する張仁忠という人物に出会う。張は八極拳の達人で彼に認められた拳児は入門し、さらに功夫を積む。夏休み、横浜で修行中のある日、チンピラ集団に因縁をつけられる。その集団のリーダー「トニー譚」という男は洪家拳という拳法の使い手で、拳児は洪家拳の一撃でやられてしまう。トニーは張仁忠に教えを乞いに来たことがあるが、その禍々しい性質を見抜いた張は入門を断っていたのだ。自分を差し置いて八極拳を習う拳児をトニーは一方的に敵視するようになる。張仁忠の助言を得、トニーとの再戦で拳児は勝利する。新学期、トニー譚が仲間と供に拳児の学校にまで乗り込んできて大暴れ。我慢していた拳児は大爆発、トニーと決闘の末、再びこれを打ち倒す。しかしトニーに怪我を負わせたせいで無期停学処分を受ける。話を聞いた張仁忠は、この機会に拳児の中国行きを提案する。張の人脈と両親の協力で拳児は中国に旅立つことになる。

登場人物[編集]

この漫画作品中の人物の内、連載当時に存命中の実在した人物は偽名、すでに逝去した人物については実名で登場する。これが、この作品がフィクションとされつつも、セミフィクション的な面白さ、興味深さである。

剛拳児
初登場時は小学生、のち中学、高校生。小学生のころはワンパクな少年だったが、教育ママである母親の意に沿うかたちで割りとおとなしい性質に成長した。しかし隠れて八極拳の修行は続けていた。基本的に優しい性格だが、好戦的な一面も持つ。新しい技術の修得に関して非常に熱心であると同時に、練習熱心である。台湾、香港を経て李氏八極拳の故郷である、中国本土の滄州へと旅をする。
剛侠太郎
拳児の祖父。明るく子供っぽいが、曲がったことは許さない。口うるさい嫁がちょっと苦手。八極拳の達人で、入門した拳児を厳しく鍛える。中国に旅立ち消息不明となる。
風間晶
拳児が小学生の時にお祭りで一度会った同い年の少女。テキヤである関東大和屋一家の親分の娘。中学生になってから拳児と再会する。そのとき晶は暴走族「鉄羅漢」のメンバーだったため、拳児を乱闘騒ぎに巻き込んでしまう。
井上
拳児とタイマンをへて友達となった暴走族「鉄羅漢」のリーダー。拳児よりも年長。対立グループとの乱闘を機に暴走族をやめ、張仁忠の店でコックの見習いとして働き始める。この井上の紹介で拳児は張仁忠に出会う。
張仁忠
横浜中華街で中華料理店を経営する中国人。八極拳の達人。拳児に八極拳を教え、中国にわたるという拳児を、台湾に住む劉月侠に引き合わせ、八極門に入門させる手引きをする。実際に銀座で中華料理店を経営していた張世忠がモデル。モデルとなった張世忠は武術界のみならず馬賊などとも交流があり激動の中国で半生送り日本へやってきた。日本で何冊か武術の本を出版している。
トニー・譚
横浜に住むシンガポール生まれの中国人。洪家拳の使い手で、初対決の時は拳児は歯が立たなかった。その後、八極拳の功夫を高めた拳児に惨敗し、中国に渡って「心意六合拳」を学んで拳児に復讐戦を挑む。負けそうになると刃物も出す卑怯で残忍な男。原作者・松田隆智の友人であるアメリカ在住の南派拳法家・トニー・チェンが容姿・経歴・門派のモデル。そのトニー・チェンも実名で劇中に登場し、トニー・譚とは義兄弟の間柄という設定。
李書文
侠太郎が拳児に教え聞かせた、侠太郎たちの受け継ぐ李氏八極拳の祖。とてつもない強さで数々の伝説を残している達人。槍を得意としていたので「神槍」とも呼ばれる。過去の人物なのでもちろん拳児たちとからむシーンはないが、伝説としてたびたび登場し、21巻では番外編として李書文のエピソードのみでまとめられている。
劉月侠
八極拳の達人。李書文の最後の弟子と言われていて、戦時中は工作員として活動していた。戦後は台湾で隠遁していたが、晩年に八極拳を才能ある若者に伝えようとし、拳児もその一人。実在の達人「劉雲樵」がモデルで、外見や経歴などはほぼ漫画の通りの人物像。
蘇崑崙
劉月侠の高弟で、明るくオッチョコチョイなキャラながら、拳法の腕は超一流で在台米軍の格闘インストラクターを依頼される腕前。八極拳蟷螂拳を得意とする。台湾在留中の拳児に拳法を教える。実在の人物(現在アメリカ合衆国ニューヨーク州在住、台湾出身の蘇昱彰(そいくしょう))がモデル。原作の松田隆智は一歳年下のこの人物に入門した経歴がある。日本にも道場があり、実際に来日し中国伝統武術を普及に努めている。
徐文学
劉月侠の高弟。陳氏太極拳を得意とする。台湾在留中の拳児に主に陳氏太極拳を教え、特に陳氏太極拳発祥の地である陳家溝(河南省温県)でも失伝した忽雷架を教える。徐紀がモデル。原作の松田隆智ものこの人物に忽雷架を含む陳氏太極拳を習った。
高山双八
剛侠太郎の友人である空手家。拳児が張仁忠に出会うまでの間、助言を与える。金澤弘和(国際松涛館空手道連盟最高師範)がモデル。
佐上幸義
大東流合気柔術の達人。佐川幸義(大東流合気武術宗範)がモデル。原作の松田隆智は、中国拳法を学ぶ以前は佐川の弟子だった。佐上幸義が登場するシーンを描く際、作画の藤原芳秀に佐川道場を見学させたという。
朱勇徳
強氏八極拳(李書文系とは別系統の八極拳)の使い手。強氏八極拳の朱宝徳がモデル。
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