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(き)は、植物の形のひとつ。硬いをもち、幾本ものがあり、地面を張り、生長する。幹は木質化し、次第に太く成長する。

枝の先にはを付け、を咲かせ、主に種子をもって繁殖する。

定義を巡って

植物学では、何をもって木と判断するかは難しいところである。

年輪ができる植物を木本(もくほん)類)、できない植物を草本(そうほん)類)と定義する場合もある。この場合、「パパイアの木」には年輪ができないので、「草」に分類される。ただし、年輪は、季節による寒暖の変化や、乾燥・湿潤の変化により組織の生長スピードが変化した結果生じるから、明らかに木であっても、連続的に生長する条件(熱帯雨林のように、1年を通じて寒暖等が変化しない環境で生長した場合など)では、年輪はできない。そこでこの見方を拡張して、茎が肥大成長する植物が木本、しないものが草本という区別がある。つまり、茎の周囲に形成層があって、年々太く育つものが木である。

さらに別の見解として、とは非常に厚くなった細胞質を持つ死んだ細胞により生体が支持されている植物であるという見方もある。細胞が非常に厚い細胞壁を発達させ、死んで生体の支持に使われるようになることを木化、あるいは木質化という。具体的にいうと、いわゆる木材は、主として道管から成り立っているが、この道管は細胞壁が厚くなって、最後には細胞そのものは死んで、残った細胞壁がパイプの形で水をくみ上げる仕事を続けるものである。そのような部分をもつ植物が樹木だ、という判断である。

前者の定義に従うと、は「肥大成長」しないので「草」であるが、後者の定義に従うと、「死んだ細胞で支持されている」ので「木」と言うことになる。上田弘一郎京大名誉教授(世界の竹博士)は『竹は木のようで木でなく、草のようで草でなく、竹は竹だっ!』と力説していた。[1]

また、木か草かということは、必ずしもに固有の性質ではない。 ナス科、キク科、マメ科などには、通常は草として生育しているが、条件がそろえば枯れることなく連続的に生長し、軸を木化させる種もたくさんある。

進化的意味

木は陸上植物のみに見られる植物の形である。水中の植物にもコンブのように大きくなるものはあるが、それらは柔軟で細長い構造をしており、幹のような構造を持たない。これは、水中では体を支える必要がないこと、逆に陸上ではそれを支える仕組みなしには生存できないことによる。陸上生活を行うために、植物は空気中で広げられる葉や、それを支える茎、それに体を固定し保持し、水を吸い上げる根を発達させた。そのことで体を空中に突き出すことができるようになったことが、今度は他者より高い位置に出てその上に葉を広げる競争を生み出したのであろう。そしてこれを大規模に行うための適応が、木質化や肥大成長であり、それを支える根もさらに発達し、そのような構造を獲得することで植物は地上でもっとも背の高い生物となり得た。また、胞子による繁殖から種子の形成に至る生殖方法の進化は、自由な水に依存しない生殖を確保する方向の進化といわれるが、同時にそのような構造が地表をはるかに離れた枝先に形成されるようになったことの影響も考えられる。

生態学的意味

樹木は、それが可能な条件下では、ほとんどの陸上環境において、その地で最も大きくなる植物である。樹木が生育すれば、それによって地面は覆われ、その下はそれがない場合とははるかに異なった環境となる。これによって形成される相観、あるいはそこに見られる生物群集森林という。したがって、樹木の生育は、ある面でその地域の生物環境の重要な特徴を形成する。気候生態系をそこに成立する森林の型で分けるのはそのためである。

また、樹木は、その体を支持するために太くて固い幹を持つ。この部分はその群集、あるいは生態系における生物量の大きな部分を占める。つまり、木は生産物を多量に蓄え、保持するという点で、極めて特異な生産者である。その資源の大部分はセルロースリグニンという、いずれも分解の困難な物質であり、しかも頑丈で緻密な構造を作るため、これをこなせる生物は少ない。菌糸をのばし、その表面で消化吸収を行なうという生活の型をもつ菌類は、この資源を利用して進化してきたという面がある。それを含めて、この資源を巡っては、分解者と呼ばれるような、独特の生物の関わりが見られる。そこに生息する動物にも、シロアリキクイムシなど、菌類や原生生物との共生関係を持つものがある。

他方、太くて高く伸びる茎や、細かく分かれた枝葉は、他の生物にとっては複雑で多様な構造を提供するものであり、生物多様性の維持に大きな意味をもつ。また、森林において、生産層は樹木の上部に集中する。しかし、それら地上に離れ離れに存在する幹から伸びたものである。したがって、ここを生息の場とする場合、場所を変えようとすれば、飛ばない限りは、一旦地上におりなければならない。これは大変なエネルギーロスである。動物の飛行滑空の能力の発達は、ここにかかわる場合も多いと考えられる。

分類学的意味

樹木になる植物は、シダ植物種子植物のみである。コケ植物には樹木はない。

シダ植物には、古生代にはリンボクなど多数の樹木が存在したが、それらの子孫はごく小型の草本として生活している。現在のシダ類で大型になるのは、ヘゴなど、いわゆる木生シダ類である。ただし、その茎は材としては不完全で、表面を覆う根に支えられている。

裸子植物の祖先とされるシダ種子植物も大型で、裸子植物のほとんどが木本である。中生代の地上を覆ったのは、裸子植物の森林であった。それ以降は、その後に出現した被子植物に、多くの場所で取って代わられ、裸子植物は、寒冷地などにその勢力の多くを保持している。

被子植物は木本のものも草本のものもあるが、どうやら草本の性質は木本から二次的に出現したと考えられている。特に双子葉植物に木本のものが多い。非常に多くの群があるが、森林の形成から見ると、ブナ科植物が重要である。

単子葉植物には、普通の意味での木本はなく、いずれも特殊な構造をしている。ヤシ科タコノキ科などは木本である。イネ科タケは木本・草本どちらとも取れる。

文化的意味

生きた木は木陰を作り、風よけとなり、種によっては食糧を供給し、心に潤いを与えるので、人家周辺に木を植える事は世界に広くおこなわれる。地域によってその有り様は様々である。特に大きな樹木を神聖視して、これを祭り崇めることを巨木信仰という。天に届く木や、世界を支える木に関する神話伝説があちこちに見られる。単独の樹木ではなく、森林、あるいはそれを置く山を信仰の対象とする場合もある。日本では神社には鎮守の森があり、さらに神木がまつられることもある。 木にかかわる神話伝説の類いには以下の様なものがある。

潤いと木陰を求めて樹木を栽培することもよく行なわれる。町の中に植栽されたものを街路樹、特に道路ぞいに植えられたものを並木、庭の仕切りとするものを生垣、家を覆うように作られるのが屋敷林といったふうに、様々な呼び名がある。

木は製材され、木材となり、建築材や家具、さまざまな道具の材料として利用される。材木の供給を求めての人工林も作られる。内装無垢材を使用した家はシックハウス症候群対策に再び見直されはじめた。また、木の香りにはリラックス効果が認められている。

また、人類の歴史のはじめから、燃料としても利用されてきた。木を蒸し焼きにして炭化することで、燃料としての有用性を高めたのが(木炭)である。

現代社会では、の原料としての用途も重要である。

種類

脚注

  1. 尾池和夫 (2007) 尾池和夫 京都大学-大学の紹介/総長室 2007年4月6日 大学院入学式 式辞 2007-04-06 [ arch. ] 4月9日

関連項目

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