国立国会図書館

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国立国会図書館(こくりつこっかいとしょかん)は、国会議員の調査研究のための図書館であり、また納本制度に基づき、原則として国内で出版されたすべての出版物を収集・保存する日本唯一の法定納本図書館である。英語名はNational Diet Library

立法府である国会に属する国の機関で、国会の立法行為を補佐することを第一の目的とする。同時に納本図書館として日本で唯一の国立図書館としての機能を兼ねており、行政司法の各部門および国民に対するサービスをも行っている。

施設は東京本館、関西館と多数の支部図書館に分かれており、東京本館は東京都千代田区永田町一丁目、関西館は京都府相楽郡精華町精華台に位置する。

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国立国会図書館東京本館
東京・永田町一丁目)

沿革[編集]

国立国会図書館は、戦前に、旧憲法下の帝国議会両院に置かれていた衆議院図書館、貴族院図書館と、文部省に付属していた帝国図書館の3館を淵源としている。両院の図書館は1891年の両院図書室設置を起源としており、帝国図書館の前身である書籍館の創立は1872年にまで遡る。

第二次世界大戦後、民主主義的な国会の立法と運営には議員のための調査機関である議会図書館の拡充が必要という要請に従い、国会法第130条に議員の調査研究に資するため国会図書館を置くことがうたわれた。このために国会法と同時に国会図書館法(1947年4月30日公布)が制定され、両院の図書館を合併させた国会図書館の設立が定められたが、国会議員の調査研究に足る充実した国会図書館を設立させるにはその内容は不十分であるとみられた。

そこでアメリカから図書館使節団が招かれ、国会はその意見を取り入れて国立国会図書館法(1948年2月9日公布)を成立させた。同法がアメリカ図書館使節団の強い影響下に誕生したために、国立国会図書館は米国議会図書館 (Library of Congress) をモデルとして、議会図書館であると同時に国立中央図書館の機能を兼ね、国内資料の網羅的収集と整理を目的とした法定納本制度をもつことになった。

法の制定とともに国会図書館の設立準備が進められ、初代館長には憲法学者日本国憲法制定時の憲法担当国務大臣だった金森徳次郎が迎えられて、1948年2月25日に国立国会図書館は発足した。続いて初代副館長に美学者尾道市立図書館長だった中井正一が任命され、1948年6月5日に旧赤坂離宮(現迎賓館)を仮庁舎として正式に開館した。

1949年には国立国会図書館法で規定されていた方針に基づき、戦前に出版法に基づいて納本された出版物を所蔵していた上野の国立図書館(1947年に帝国図書館から改名)が統合され、国立国会図書館は名実ともに日本唯一の国立図書館となった。旧帝国図書館の蔵書と施設はそのまま上野に残され、同館は国会図書館の支部図書館である支部上野図書館とされた。

組織の創立に対して建設が遅れていた国会図書館の本館庁舎は、国立国会図書館法と同時に公布された国立国会図書館建築委員会法に基づいて検討が進められ、国会議事堂の北隣にあった旧ドイツ大使館跡地に建設されることになった。永田町の本館(現在の東京本館)は1961年に第一期工事を完了し、両院図書館からの引継書と戦後の収集分からなる赤坂の国会図書館仮本館蔵書約100万冊と、帝国図書館による戦前収集分を基礎とする上野図書館の蔵書約100万冊が移転、ここに別々の歴史をもつ二館の蔵書は一館に合流した。同年11月1日、国立国会図書館本館は蔵書205万冊をもって開館した。

本館の工事は開館後も続けられ、増築の進捗にともなって旧参謀本部跡(現憲政記念館)の三宅坂仮庁舎に置かれていた国会サービス部門も本館内に移転し、赤坂・上野・三宅坂の三地区に分かれていた国会図書館の機能は最終的な統合をみる。本館は開館から7年後の1968年に竣工し、地上6階地下1階の事務棟と17層の書庫棟からなる施設が完成した。

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国立国会図書館・東京本館の遠景

1970年代には蔵書の順調な増大、閲覧者の増加が進み、本館の施設は早くも手狭になりつつあった。このため本館の北隣に新館が建設されることになり、1986年に開館した。地上4階地下8階で広大な地下部分をすべて書庫にあてた新館の完成により、国会図書館は全館合計で1200万冊の図書を収蔵可能な巨大図書館となったが、これも21世紀初頭に所蔵能力の限界に達することが予測された。

このため1980年代以降、第二国立国会図書館を建設する計画が浮上した。第二の国会図書館は増えつづける蔵書を東京本館と分担して保存するとともに、コンピュータ技術の発達にともなう情報通信の発展に対応する情報発信、非来館型サービスに特化した図書館として関西文化学術研究都市に建設されることになり、国立国会図書館関西館として、2002年に開館した。関西館には科学技術関連資料、アジア言語資料、国内博士論文などが移管され、東京本館とともに国立国会図書館の中央館を構成する一角となった。

また、関西館の開館に前後して、支部上野図書館の施設を改築の上、国際子ども図書館として活用する計画が進められた。国際子ども図書館は国立国会図書館の蔵書のうち児童書(主に18歳未満を対象とする図書館資料)を分担して所蔵する児童書のナショナルセンターとして位置付けられ、2000年に部分開館、2002年に全面開館した。

近年は、電子図書館事業の拡充に力が注がれる一方、2005年の国立国会図書館法における館長の国務大臣待遇規定の削除、2006年自由民主党行政改革推進本部の国会事務局改革の一環としての独立法人化の提言、2007年の国会関係者以外からは初めてとなる長尾真京都大学総長の館長任命など、国会図書館の組織のあり方をめぐる動きが相次いでいる。

理念[編集]

国立国会図書館法の前文は、「国立国会図書館は、真理がわれらを自由にするという確信に立って憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命としてここに設立される」と、その設立理念を明らかにしている。前文の一節「真理がわれらを自由にする」は、図書館が公平に資料を提供してゆくことで国民に知る自由を保障し、健全な民主社会を育む礎となっていかねばならないとする国立国会図書館の基本理念を明らかにしたものであると解釈されている。

国立国会図書館法はアメリカ図書館使節団の原案をもとに起草されたと言われているが、この前文は歴史学者参議院議員の羽仁五郎(当時の参院図書館運営委員長)が挿入したとされる。「真理がわれらを自由にする」の句は羽仁五郎の創案になるもので、羽仁がドイツに留学していた当時、留学先のフライブルク大学の図書館の建物に刻まれているのを見て感銘を受けたという銘文「WAHRHEIT WIRD MAN FREI MACHEN(真理は人を自由にする)」をもとにしたといい、その句は『新約聖書』の「Η ΑΛΗΘΕΙΑ ΕΛΕΥΘΕΡΩΣΕΙ ΥΜΑΣ(真理はあなたたちを自由にする)」(ヨハネによる福音書 8-32)に由来していると言われる(羽仁五郎『図書館の論理:羽仁五郎の発言』日外アソシエーツ、1981年)。

1961年に開館した国立国会図書館東京本館では、本館2階目録ホールの壁に金森初代館長の筆になる「真理がわれらを自由にする」の句が大きく刻まれ、この句は多くの人の目にとまるようになるとともに、ひとり国立国会図書館のみならず図書館一般の原理として理解されるようになった。戦後日本の図書館運動・図書館界の発展においてこの句が与えた影響は少なくない。

組織[編集]

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関西館 陶器二三雄設計

国立国会図書館は日本の立法府である国会に属する独立した国の機関で、衆議院及び参議院議長及び両議院に置かれる常任委員会である議院運営委員会の監督のもと自立して運営される。図書館の事務を統理する国立国会図書館長は、両議院の議長によって任命される。

その組織は国立国会図書館法に基づき、中央の図書館と支部図書館からなる。中央の図書館には、東京・永田町の東京本館と京都府の関西館があり、支部図書館のひとつである国際子ども図書館の扱うものを除き、国会図書館の所蔵する各種の資料を分担して保管している。また、国会議事堂の中には、中央の図書館に付属する国会分館がある。

支部図書館は、国際子ども図書館東洋文庫そして行政および司法の各部門におかれる図書館がこれに該当する。このうち国際子ども図書館は、納本制度によって国会図書館に集められた日本国内の出版物や購入・国際交換によりもたらされた日本国外の出版物のうち、18歳未満を読者の主たる対象とする資料の保存・提供を分担しており、その性格は実質的には中央の図書館の分館に近い。また、支部東洋文庫はアジア研究専門の図書館兼研究所である財団法人東洋文庫の寄託を受け、文庫の図書館奉仕部門を国立国会図書館の支部として国会図書館の組織内においたものである。

行政および司法の各部門、すなわち各省庁および最高裁判所に置かれる図書館については行政・司法に対するサービスの節で改めて詳しく扱うが、各省庁や裁判所に置かれる付属図書館を制度上国立国会図書館の支部とすることで、日本唯一の国立中央図書館である国会図書館と各図書館を一体のネットワークに置いたものである。これらの図書館は、設置主体は各省庁や裁判所であるが、同時に国立国会図書館の支部図書館として、中央の図書館とともに国会図書館の組織の一部とされる特別な位置付けにある。

東京と関西の2つの施設に分かれた中央の図書館はおよそ900人の職員を擁しており、業務ごとに部局に細分化されているが、そのうち唯一国立国会図書館法を設置の根拠とする特別な部局として「調査及び立法考査局」がある。調査及び立法考査局は国会に対する図書館奉仕に加えて、衆参両院の常任委員会が必要とする分野に関する高度な調査を行う特別職として置かれる専門調査員を中心に、国会からの要望に応じた調査業務を行っている。

サービス[編集]

国立国会図書館のサービスは、以下の3本の柱から成り立っている。

  • 国会へのサービス。立法の際に必要となる資料の収集と分析、提供を行う。
  • 行政・司法へのサービス。各府省庁と最高裁判所に支部図書館を設置し、図書館サービスを行なう。
  • 国民一般へのサービス。一般利用者が直接、または他の公共図書館などを通じて間接的に受けるサービス。また、地方の議会や公務員へのサービスもここに含まれる。

「国会図書館」という名称から明らかなように、国会へのサービスを第一義とするが、国民一般へのサービスも国立国会図書館の重要な要素である。国民へのサービスは日本の国立中央図書館としての機能であり、納本制度に基づく国内出版物の網羅的コレクションや全国書誌の作成が行われる。また、図書館間協力や国際協力にも力を入れており、国際協力では資料の国際交換、資料の貸出・複写・レファレンス、日本語図書を扱う外国人司書の研修などを行なっている。

一般利用者へのサービス[編集]

一般利用者へのサービスは、来館利用、利用者の身近にある図書館などを通じた間接的な利用、そして後述するインターネットを通じた電子図書館サービスの提供などから成り立っている。

国立国会図書館の各サービスポイント、すなわち東京本館、関西館、国際子ども図書館などを利用者が直接訪れる来館利用では、利用に許可の必要な貴重書や特別の事情があって利用の制限されている資料を除き、国会図書館の所蔵する膨大な資料が利用者の求めに応じて提供される。国会図書館の所蔵する資料は現在では3館に分散しているが、それぞれに取り寄せて来館利用することが可能である。

間接的な利用では、一般の図書館利用者が最寄の図書館では入手できなかった資料を網羅的なコレクションをもつ国会図書館から図書館間貸出で取り寄せたり、最寄の図書館では解決できなかったレファレンス(図書館員の行う参考調査)を国会図書館に依頼したりすることができる。

図書館間貸出は、利用者の身近にある公共図書館大学図書館や各種の資料室(ただし国会図書館の図書館間貸出制度に加入申請し、承認を受けた機関のみ)を窓口として、国会図書館の資料を利用できる制度である。ただし、あくまで図書館間貸し出しであるため借り出し先の図書館の館外に持ち出すことはできず、図書館資料を所蔵館外で複写することを禁じた著作権法の規定のため複写も認められない。

国会図書館は資料の保存を大原則としているため、利用者の身近にある多くの図書館と違い、来館利用でも個人に対する貸出を行っていない。また、所蔵する資料が膨大であり、サービスの対象とする地域も日本全国から諸外国にまで及んでいるため、個人からの利用には数多くの制約がかけられていたり、不便に感じられる点も多い。そのため、利用者は求める資料の入手をはかる場合、身近な公共図書館や大学図書館を利用した場合のほうが容易に資料に達することができることがしばしばであり、他の図書館で見当たらない資料のみに限って国会図書館を利用すべきとされる。このような国会図書館の性格を指して、「国会図書館は資料の最後のよりどころ」という言い方がなされている。

国会に対するサービス[編集]

国会図書館の国会に対するサービスは、資料の提供、貸し出しなどの一般的な図書館サービスに加えて、議会図書館に特有の立法調査を兼ね備えている。

東京本館と国会議事堂内の国会分館には国会議員専用の議員閲覧室があり、本館議員閲覧室には議員研究室も付設されている。議員閲覧室、議員研究室は政治家の政策勉強のほか、政治家同士の密談に使われているといわれている。また、国会議員と国会職員に対しては国会分館を中心に貸し出しサービスも行われており、図書館への貸し出しと異なって貸し出しの冊数制限も存在しない。

国立国会図書館の組織において、国会に対するサービスの主体となるのは国立国会図書館法第15条によって規定された調査及び立法考査局(略称は調査局)である。調査局は、同法の規定に基づいて、国会のための調査や立法に関連する資料の収集・提供を行うこととされている。

このために調査局には国会のための調査を行う部門と立法関連の資料提供サービスを行う部門が置かれている。調査部門の各課はおおむね国会両院の常任委員会の構成に対応する主題別に細分されており、国会議員の問い合わせに応じて調査を行う立法レファレンス業務や、時事的な問題についての予備調査を行う。

また、調査局は国会図書館の国民向けサービスのための資料収集・整理とは独立して資料の収集・整理も行っており、最新の情報を収集して立法業務の補佐に役立てている。この他、調査局を通じて行われる国会向けのサービスには国会図書館の一般の所蔵資料のうちの議会・法令関係資料の管理・提供や法令の索引作成、国会会議録のデータベース化などがあり、これらは国会図書館の閲覧室、出版活動、インターネット送信などを通じて、一般の国民に対しても提供されている。

行政・司法に対するサービス[編集]

国立国会図書館のサービス対象のもうひとつの柱は国の行政・司法に対してである。これらに対し国会図書館は図書館サービス資料の貸し出し、複写、レファレンスなどの図書館サービスを行っているが、その窓口となるのが国の行政・司法の各部門に設けられた支部図書館である。行政・司法各部門の附属図書館(支部内閣府図書館、支部最高裁判所図書館など)は、設置母体の省庁の刊行物を収めたり業務上必要な資料を収集し所蔵しており、それぞれの省庁の予算によって運営されるが、同時に制度上で国立国会図書館の支部図書館として国立国会図書館の組織に包括されている。また、支部図書館同士は国会図書館の中央館を中心にネットワークを形成し、各省庁出版物の相互交換、資料の相互貸借、図書館職員の共通研修などを行う。

行政・司法各部門支部図書館の館長はそれぞれの事務官・技官から任命されるが、その任命権は立法府の職員である国立国会図書館長に与えられている。このように三権をまたぐ支部図書館制度は世界の国立図書館の中でもきわめて珍しく、国立国会図書館のもつ大きな特色のひとつである。

国立国会図書館の特色[編集]

資料の収集・整理[編集]

世界各国の国立中央図書館は、法律などによって定められた納本制度によって出版者に特定の図書館に出版物を納めることを義務付け、一国内の出版物を網羅的に収集することを重要な役割としている。

日本の国立中央図書館である国立国会図書館においては、国立国会図書館法が、国内全ての官公庁、団体と個人に出版物を国会図書館に納本することを義務付けている。納本の対象となる出版物は、図書、小冊子、逐次刊行物(雑誌や新聞、年鑑)、楽譜、地図、マイクロフィルム資料、点字資料およびCD-ROMDVDなどパッケージで頒布される電子出版物(音楽CDやゲームソフトも含む)などである。納本を求められる部数は、官公庁では2部から30部までの複数部であり、民間の出版物は1部である。

納本以外の資料収集手段としては、寄贈、購入や、出版物の国際交換がある。購入を通じては、古書古典籍など納本の対象とならないものや、百科事典辞典年鑑など参考図書としてきわめて利用の多い資料の複本、そして学術研究に有用であると判断され選択された外国資料が収集される。国際交換は、他国の国立図書館・議会図書館に対し、納本制度によって複数部が受け入れられた官公庁出版物を主に提供することにより、交換で入手の難しい外国の官公庁資料等を収集するのに用いられている。

こうして国会図書館に新たに収集された資料は、一件一件についてその書名、著者、出版者、出版年などの個体同定情報が記述された書誌データが作成される。また国会図書館の書誌データには同館独自の国立国会図書館分類表 (NDLC) によって分類番号がつけられ、国立国会図書館件名標目表 (NDLSH) によって件名が付与されて、目録に登録される。現在では目録の大半はNDL-OPAC [1] としてオンライン化されており、その蔵書のうちのかなり部分はインターネット上から検索することが可能になっている。

なお、国立国会図書館の蔵書構築など図書館技術に関する運用は、1948年にGHQ民間情報教育局特別顧問ダウンズによって提出された勧告(ダウンズ勧告)に基づく面が大きい。図書の整理は、開館当初はダウンズ勧告に基づいて、和漢書は日本国内の図書館で一般的な日本十進分類法 (NDC)、洋書は世界的に使われる国際十進分類法 (UDC) によって行れていた。しかし、膨大な蔵書を書架に配架して利用していく上で十進分類法に不便がみられたため、1960年代に国立国会図書館分類表が考案され、適用されるようになった。ただし、和図書についてはそれ以降も書誌データには日本十進分類表による分類番号は付与されており、日本十進分類法を日常に利用している他の図書館や一般利用者の便にも備えている。

書誌データの提供[編集]

納本制度により、国立国会図書館は原則としてすべての出版物が継続的に揃うことになるため、理論的には国会図書館の編成する自館所蔵資料の目録は、日本で出版された全ての出版物の書誌情報を収めた目録となる。こうして作成された目録に収められる、全国の出版物に関する網羅的な書誌情報を全国書誌といい、国会図書館においては毎週一度、その週に納本制度によって受け入れられた資料の書誌情報が『日本全国書誌』としてまとめられている。

『日本全国書誌』はインターネット上で公開されるほか、冊子体で刊行・頒布される。また、電子情報・データベース化したものが『JAPAN/MARC』として頒布され、CD-ROM版やDVD-ROM版でも販売されている。その基本的な機能は、日本において出版された出版物を検索調査する際の総合的・統一的な索引である。

また、各図書館は、自館で所蔵する資料の目録を作成するにあたって、自館で書誌データを作成せずとも、『日本全国書誌』を利用してコピーカタロギング(書誌情報を複製して自館の目録を作成すること)することができる。これには各図書館の目録作成の労力の軽減、および国内各図書館の間での書誌データの共有というメリットがあるが、国会図書館の目録の作成には刊行からタイムラグがあり、新刊の検索に向かないことが欠点として指摘されている。これは、他の図書館が新規に受け入れて目録化する資料の多くは新刊書であるためである。このため、公共図書館の多くは『JAPAN/MARC』よりも民間の取次会社の作成する書誌データベースを目録作成に用いることが多く、コピーカタロギングのための全国書誌としての役割はあまり活用されていない。

また、国会図書館は全国書誌の作成とともに開館以来『雑誌記事索引』を作成、頒布している。これは国内の主要な雑誌の収録記事を目録化したもので、索引の範囲は主に学術誌など調査上の利用に対する要求が大きい雑誌に限定されているものの、通常の目録では検索されにくい雑誌記事の目録として貴重なものである。

蔵書[編集]

国立国会図書館の所蔵する資料の基礎となる部分は、戦前の帝国議会両院付属図書館が議会の審議をたすけるために収集した資料と、当時の日本唯一の国立図書館であった帝国図書館の蔵書の3つから成り立っている。特に帝国図書館の蔵書は出版法の納本制度に基づいて網羅的に収集された戦前の和図書や、貴重な古書洋書などを含み、きわめて価値が高い。

国立国会図書館の成立以降は一国の網羅的な収集と全国書誌の作成を目的とした本格的な納本制度が導入されたので、この図書館には原則として日本で出版されたすべての出版物が所蔵されている。外国資料については、国際交換や購入により、学術研究や参考調査に有用な人文・社会科学資料や、科学技術資料、日本関係資料などを中心に収集している。

国会図書館の蔵書の中には、旧帝国図書館時代を含め図書館がまとまって受け入れた特色あるコレクションが含まれる。これらの特殊コレクションは、資料的に価値の高いものが多い。代表的なコレクションとして、帝国図書館から引き継いだ旧藩校蔵書、徳川幕府引継書類、本草学関連の古書からなる伊藤文庫・白井文庫や、戦後の国会図書館が議会のための図書館であるという性格から重点的に受け入れた近代政治史関連史資料からなる憲政資料、国内外の議会・法令関係資料、支部上野図書館で旧蔵していたバレエシャンソン関連資料の蘆原英了コレクション、出版文化史資料を中心とする布川文庫(布川角左衛門旧蔵書)などがある。また、戦前に発禁処分を受けた書籍・雑誌もコレクションに含まれ、旧帝国図書館所蔵の発禁図書は一般資料の一部として、旧内務省保管の発禁図書は貴重書扱いのため一定の制限下で閲覧に供されている。

平成16年度末の統計によれば、国立国会図書館の所蔵資料は図書8,369,233冊、雑誌176,961タイトル、新聞10,351タイトルで、ほかにマイクロフィルムや地図、電子資料といった図書形態以外の資料を1,200万点以上所蔵している。

電子図書館事業[編集]

1990年代以降には、情報通信の発展に対応し、国立国会図書館は主にインターネット上のホームページを通じた電子図書館機能拡充を模索し始めた。

2002年には関西館の開館に伴ってホームページが大幅にリニューアルされた。国立国会図書館蔵書検索・申込システム「NDL-OPAC [2]」は機能を大幅に拡充され、国会図書館の所蔵する資料のほとんどがインターネットを通じて世界のどこからでも検索することが可能になった。国会図書館の所蔵する国内出版物は納本制度を通じて収集された日本国内の出版物の網羅的コレクション、その目録は週刊でまとめられてきた全国書誌の集積であるため、NDL-OPACを通じた書誌データの提供は、単に国会図書館一館の資料所蔵情報の公開にとどまらず、日本におけるありとあらゆる出版物の書誌データを網羅的に広く国民に提供するサービスでもある。

また、同じく雑誌記事索引もNDL-OPACを通じてインターネット検索が可能とされ、現在では国会図書館開館以来50年以上にわたって蓄積された雑誌記事索引のデータベースが公開されている。

このほか、国会図書館が所蔵する資料のうち歴史的な貴重書や錦絵の画像を公開する「貴重書画像データベース [3]」、国会図書館の所蔵する明治期に出版された資料をスキャニングした画像を提供する「近代デジタルライブラリー [4]」、インターネット上の情報を文化資産として保存することを目的とする「WARP(インターネット情報選択的蓄積事業)[5]」(旧称、インターネット資源選択的蓄積実験事業)など、様々な電子図書館コンテンツが公開されている。

近代デジタルライブラリーは、公開範囲は著作権が切れていることが確認される資料や著作権者の許諾が得られた資料に限られるものの、インターネットを通じて明治時代の出版物をいつでもどこからでも見ることができ、その文化的、歴史的な資料価値は極めて高いとされている。

WARPは、インターネットを通じて公開されていた学術誌、ジャーナルや、政府省庁などのホームページそのものを、管理者の許諾を得た上で国会図書館のサーバーに保存し、インターネットを通じて一般に公開するもので、CD-ROMのように変更されないようパッケージ化された電子情報と違い、管理者によっていつでも自由に改変することの可能なインターネット上の電子情報(ネットワーク系電子情報)を図書館が紙媒体の資料と同じように収集、整理、保存、公開する実験的な試みである。

今後の動きとしては、一国の情報資源の網羅的収集を役割とする国立図書館として、国立国会図書館がインターネット上で流通するネットワーク系電子情報をも網羅的に収集して保存することが検討されている。国会図書館の納本制度の運用について調査と審議を行う諮問機関である納本制度審議会は、2004年に行ったネットワーク系電子出版物の収集に関する答申において、インターネット情報の収集と保存、提供を制度化するよう勧告した。国会図書館はこれにもとづき、日本国内で発信されたホームページを年に一度程度の頻度で自動的・非選択的に収集し、一定の制限のもとで保存、提供などを行う事業の制度化を検討しており、まずgo.jp、ac.jp、ed.jpなど公的な性格をもつドメイン名のページを収集、公開するとの方針を「インターネット情報の収集・利用に関する制度化の考え方」(改訂版)[6]」において明らかにしている。このような動きは、自由民主党e-Japan重点計画特命委員会の『世界最先端のIT国家実現のための申入れ』(2004年)[1]を契機として注目された。しかしその後、同申入れを検討した自民党デジタルアーカイブ小委員長の野田聖子衆議院議員や山口俊一衆議院議員が平成17年に同党から離党しており、また国会図書館が将来的に行うとしている網羅的収集は、同時にわいせつ物、児童ポルノ、プライバシー侵害情報の流布などによる違法行為の助長が指摘されていることから、実現は困難であるといわれている。

国立国会図書館の利用[編集]

この章では、一般利用者として国立国会図書館の東京本館を来館利用する場合を中心に述べる。関西館および国際子ども図書館についての詳細は、それぞれの項目の記事を参照されたい。

入退館[編集]

東京本館、関西館は満18才以上ならば誰でも利用できる。これに対し国際子ども図書館は、児童に対するさまざまな個別的サービスを行っており、児童書に関する専門文献を集めた資料室を除き誰でも利用することができる。

休館日は東京本館および関西館は日曜・祝日、毎月第三水曜と年末年始で、国際子ども図書館は月曜・祝日(ただし「こどもの日」の5月5日を除く)・毎月第三水曜・年末年始である。開館時間は、東京本館が9時半から19時(土曜日が17時)、関西館が10時から18時、国際子ども図書館は9時半から17時までである。

入館にあたっては、カード発行機を利用して入館ゲートの通過や、資料の検索、請求、受取、複写などに用いる当日限りの館内利用者カードを受け取る。カード発行にあたっては氏名や住所、電話番号などが必要であるが、あらかじめ利用者登録を行っていれば、登録利用者カードを用いて入力を省略することができる。なお、東京本館と関西館では、カバンなどの荷物の持込を禁止しているため、入館にあたってロッカーに預けなければならない。

利用が終わった後は、まず受け取った資料をすべてカウンターに返却した後、館内利用カードをゲートに通して返却し、退館する。

資料の配置と閲覧[編集]

東京本館は、膨大な資料を管理するため原則としてすべての資料を利用者が直接触れられない書庫に配架する閉架式をとっている。このため利用者は、まずNDL-OPAC(国立国会図書館蔵書検索・申込システム)で必要とする資料を検索し、システムを通じて資料の申込を行う。書庫からはNDL-OPACの申込データをもとに資料が出納されるが、膨大な数の資料を広大な書庫から出納するため、利用者は本の受け取りに数十分程度の時間を要する。また、一人一回請求する冊数も制限されている。

東京本館は本館と新館の2棟から成り立っており、基本的に本館2階カウンターが図書、新館2階カウンターが雑誌の出納を担当している。また、主題別の特殊な資料や、国会図書館として特色的な資料については、それぞれに専門室が設けられている。専門室では利用の多い参考資料は開架されているため、そこでは事典統計年鑑新聞などの一部は書架から直接手にとって利用することができる。

現在東京本館にある専門室は、本館2階に科学技術・経済情報室(科学技術及び経済社会関係の参考図書、科学技術関係の抄録・索引誌)と人文総合情報室(総記・人文科学分野の参考図書類、図書館・図書館情報学関係の主要雑誌等)、本館3階に古典籍資料室(貴重書、準貴重書、江戸期以前の和古書、清代以前の漢籍等)、本館4階に地図室(一枚ものの地図、住宅地図等)と憲政史料室(日本近現代政治史料、日本占領関係資料、日系移民関係資料)、新館1階に音楽・映像資料室(レコード、CD、ビデオ、DVD等)と電子資料室(CD-ROMなどの電子資料、電子ジャーナル等)、新館3階に議会官庁資料室(内外の議会会議録・議事資料、官公報、法令集、判例集、条約集、官庁刊行資料目録・要覧・年次報告、統計資料類、政府間国際機関刊行資料、法律・政治分野の参考図書等)、新館4階に新聞資料室(新聞の原紙、縮刷版・復刻版、マイクロフィルム、新聞切抜資料)、の計9室である。かつてはアジア北アフリカ諸国の諸言語資料を専門とするアジア資料室も東京本館に置かれていたが、関西館の開館にともなってその蔵書とともに関西館に移転し、アジア情報室と改称した。

複写サービス[編集]

複写(コピー)は、利用者自身がコピー機でコピーを取ることはできず、複写カウンターに申し込んで行う。利用者の自由な複写を許さないのは、国会図書館が納本図書館として資料保全を図る必要があり、また図書館一般における利用者の複写は、原則として著作権法第31条の定める著作権者の許諾を得ない複写の範囲などに限られている[2]ことから、同館は複写する部分を図書館側がチェックすることになっているためである。このため、たとえ国会図書館にしか所蔵されていない貴重な資料であろうとも、逐次刊行物の最新号や著作権の存続している資料の全頁を複写することはできない。

セルフコピーができないために、混雑時にはコピーの申し込みをしてから複写製品を受け取るまでに数十分の時間がかかる。資料出納の待ち時間に複写に要する待ち時間を加えると、目的の資料の複写物を入手するまでに相当の時間がかかり、待ち時間の長さは国会図書館利用の上で、利用者への大きな負担となっている部分である。

ただし、関西館にはセルフコピー機があり、参考資料の一部を利用者自身で複写することができる(図書館担当者による複写箇所の確認は受ける)。

また、あらかじめ利用者登録をすれば、インターネット上でNDL-OPACから資料を特定し、郵送でのコピーサービスを実費のみで受けることができる。遠隔コピーサービスは雑誌記事索引と連動し、検索した雑誌の特定の記事を指定してコピーを受け取ることも可能である。


著名な在職者[編集]

参考文献[編集]

  • 稲村徹元・高木浩子「「真理がわれらを自由にする」文献考」『参考書誌研究』35号、1989年2月、pp.1-7.
  • 歌田明弘「大山鳴動ネズミ一匹? : ─国のウェブ保存政策」『ミュージアムIT情報』2005年7月(http://www.dnp.co.jp/artscape/artreport/it/u_0507.html )
  • NDL入門編集委員会編『国立国会図書館入門』(三一新書)三一書房、1998年 (ISBN 4380980081)
  • 加藤一夫『記憶装置の解体 国立国会図書館の原点』エスエル出版会、1989年
  • 国立国会図書館編『国立国会図書館のしごと 集める・のこす・創り出す』日外アソシエーツ、1997年 (ISBN 481691434X)
  • 国立国会図書館関西館編『図書館新世紀 国立国会図書館関西館開館記念シンポジウム記録集』日本図書館協会、2003年 (ISBN 4820403133)
  • 国立国会図書館百科編集委員会編『国立国会図書館百科』出版ニュース社、1989年 (ISBN 4785200391)
  • 国立国会図書館を考える会『国立国会図書館解体新書』国立国会図書館を考える会、1988年 (非売品)
  • 佐藤晋一『中井正一「図書館」の論理学』近代文芸社、1992年 (ISBN 4773316969)(増補版、近代文芸社、1996年)
  • 住谷雄幸『図書館の戦後 真理がわれらを自由にする』ぱる出版、1989年 (ISBN 4893860453)
  • 羽仁五郎『図書館の論理 羽仁五郎の発言』日外アソシエーツ、1981年 (ISBN 4816900675)

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  1. http://www.hirataku.com/policy/html/200506.html
  2. 国会図書館自身が定めた利用規則ではその31条で複写範囲を規定している。国立国会図書館資料利用規則(pdf)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]